近年、SDGs(持続可能な開発目標)達成の一環として、人々の多様性を受け入れる社会の実現が求められています。
いわゆる「多様性(ダイバーシティ)の実現」は政府や自治体だけの課題ではなく、企業や個人においても、積極的に取り組んでいくべき課題だと言われています。
多様性が当たり前の時代に
近年、人々の多様性を受け入れる社会の実現が求められ、あちこちで「多様性」と叫ばれています。
「多様性」という言葉の普及と共に、「ポリコレ」という言葉も耳にするようになってきました。
「ポリコレってどういう意味?」と言いづらくなる前に知っておきたい!という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ポリコレとはどういう意味で、具体的にどのようなものを指すのか、分かりやすくまとめました!
ポリコレとは?簡単にわかりやすく解説!
ポリコレとは、「ポリティカル・コレクトネス(political correctness)」の略。
意味は、他者に対して、人種、性別、国籍、宗教、年齢、障がいなどを理由とした「差別的な表現を正す」という考え方のことです。
社会では、さまざまな人たちが共存する多様性が進んでいます。
それに伴い、あらゆる人を尊重するために、この「ポリコレ」が求められるようになってきました。
アニメや漫画、ゲーム、映画、テレビ番組、芸術などの世界でも、ポリコレは広がっています。
性別における差別をなくしたポリコレの例
職業
以前は看護師の男性を「看護士」、女性を「看護婦」と呼んでいました。
小さい女の子たちも、「将来の夢はかんごふさん!」と言っていましたね。
1948年(昭和23年)に公布された「保健婦助産婦看護婦法」でも、女性を表す「婦」という言葉が使われていました。
しかし、2002年(平成14年)3月に「保健師助産師看護師法」という法律名に改正され、男女共通で「看護師」と呼ばれることに統一されました。
▼同じように、職業において性差別をなくしたポリコレの例
「スチュワーデス」
→「客室乗務員・キャビンアテンダント」
「保母・保父」
→「保育士」
「カメラマン」
→「フォトグラファー」
「ビジネスマン」
→「ビジネスパーソン」
敬称・呼び方
小さな子どもなどに使う「くん」や「ちゃん」という呼び方も、「さん」に統一されることが多くなりました。
アメリカでは、性別を表す「彼(he)」「彼女(she)」が個人の性に配慮していないとして、「彼ら(they)」「それ(it)」に置き換えられる場合も増えたようです。
保育園などではまだまだ「ちゃん」「くん」が当たり前のところが多いですが、小学校では「○○さん!」と呼び合うようにさせているところがほとんどですね!
また最近では、アンケートなどで
- 性別チェック欄が「男性・女性」から「男性・女性・回答しない」
- 関係性の欄が「夫・妻」のみから「夫・妻・パートナー」
などと、選択肢が以前より増えているものも多く目にするようになりました。
人種における差別をなくしたポリコレの例
呼び方
特定の人種を指す呼び方がポリコレに反するとして、改められた例があります。
アフリカ系アメリカ人は以前まで「ブラック(Black)」と呼ばれていましたが、「アメリカン・アフリカン(American African)」に呼び方が変わりました。
また、アメリカ先住民の「インディアン(Indian)」という呼び方も、今は「ネイティブ・アメリカン(Native American)」となっています。
日本では、色鉛筆やクレヨンの色に日本人の肌色に似た色で「はだいろ(肌色)」と呼ぶ色があります。
しかし、人の肌の色に対して固定観念を与える可能性があるため、「うすだいだい」と表記されているものがほとんどになりました。
2021年には、ファミリーマートから「はだいろ」というカラーの女性用下着が販売されましたが、これが不適切な表現であったとして回収し、「ベージュ」に変更したというニュースもありました。
映画・ゲーム
映画やゲームにもポリコレが浸透しつつあります。
2023年に公開されたリトルマーメイドの実写映画では、アニメで主人公の肌の色は白く髪の毛は赤色だったのに対し、映画ではアフリカ系アメリカ人の俳優が主人公を演じています。
アニメ版とは異なる設定をすることで、特定の人種にイメージが固定されない配慮だと考えられています。
また、ゲームの中でもさまざまな観点からポリコレが行われています。
例えば登場人物に美男美女が多いことに対して。
世の中は容姿端麗な人ばかりではないため、美男美女ではないキャラクターや登場人物が増えているのも最近の傾向です。
やりすぎ・わざとらしいと言われたポリコレの例
ポリコレは、多様性を尊重する社会の実現を目指す一方で、「やりすぎでは?」と指摘されている面もあります。
人種におけるポリコレの例であったように、美男美女が登場しないゲームに「魅力がない」という意見や、「ゲームの楽しみの一つが奪われてる」と考える人がいるのも事実です。
また、ディズニーの映画「リトルマーメイド」では、主人公の人魚アリエルが、アニメとは違い黒人の女優であるHalleBaileyさんが演じています。
2017年に公開された実写版「美女と野獣」では、ガストンの子分、ル・フウがディズニー映画史上初めてLGBTキャラクターとして登場。
ディズニーの子会社であるピクサーの映画「バズ・ライトイヤー」では、バズの相棒で、メインキャラクターの一人であるアリーシャがレズビアンで、同性と結婚して子どもをもうけ、幸せに暮らすシーンが描かれています。
あまりにも立て続けに「ポリコレ」要素が含まれ過ぎており、「人権啓発の教材を見せられているような気持ちになる」「面白さ二の次で強調したいこと伝える目的で作られてるとしか思えない」「素直に楽しめない」という感想も見られました。
2023年11月には、米ディズニーのボブ・アイガーCEOが、近年のディズニー作品やキャラクターがポリコレに偏り過ぎていたと認める発言をして話題になりました。「ポリコレ」と言われる要素がエンターテインメント性を上回っていることを指摘されており、「一番は楽しませること」だと、あらためてエンターテインメントの基本へ戻るようかじ取りをしていると説明しました。
映画やゲームなどのポリコレ作品は、色々な人達を尊重したいという時代になってきたからこそ増えているだけであり、今後はあえて強調したような作品は少なくなっていくのではないでしょうか。
ポリコレは何のため?
日本を含め、世界では多様性を尊重する方向に向かっています。
なぜなら多様性のある社会では、各々の考えが相互に作用して、新しい発想やイノベーションが生まれやすいからです。
多様性を持った人が組織の中で活躍できる環境を作ることで、生産性や競争力も上がり、結果として、豊かな社会の創造や、持続可能な未来につながると考えられています。
また単純に、ポリコレのおかげで楽になった人たちも、実際にたくさんいるはずです。
「みんな違ってみんないい」という言葉のように、一人一人いろんな違いがあることが普通だという世界の構築によって、より多くの人が生きやすい世界を作ることも、ポリコレの目的の一つと言えます。
まとめ
やりすぎ・わざとらしいとも言われる「ポリコレ」。
時代の変化に気持ちが追いついていかないという人も多いかもしれません。
新しい時代の急激な変化に慣れようとするのは大変ですが、壁を作らず、置いて行かれないように順応していきたいですね。
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